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 [回想1]

その日の夕食から、食堂で上級生と一緒にとることとなった。

小学校の給食のように寮の部屋ごとにご飯、おかず、汁物が容器に入れられていて、
それをとってきて、テーブルで配膳するという形式だった。

配膳にも時間の制限があるらしく、
教官が席に着くまでにやらなければならないらしい。
先輩も含め、テーブルを拭く人、やかんにお茶を持ってくる人、
ご飯を配膳する人などに分担して皆で協力して行った。

配膳は、中に入っているのを残さず全員に配膳しなければならず、
男子と同等の量が入っているため、とても食べ切れそうにない量であった。
先輩曰く、「残してもOK。女子には完食は無理。」なのだそうだ。

食事は全員が配膳を終了し、席に着いた時点からは一切の離席は禁止。
立つことも許されなかった。
そんな中、当直教官が入ってきて、
なんか一言あったあとで、皆でいっせいに
「いただきます!」

食事中は小声でのおしゃべりはOKだった。
が、制限時間があるため、皆無言で黙々と食べていたように思う。

1人の先輩がお茶をおかわりしようとして、
やや離れた位置にあったやかんの方に手を伸ばしていた。
微妙に届かず、腰を浮かすが、立ってはいけないので、
低い姿勢を保ちつつ、なんとかやかんを手にしていた。

なんで食事までこんなに気苦労が多いのかわからない。
緊張で食欲が全然わかず、ほとんど残してしまった。

ご馳走様も皆でいっせいに。
片付けは何個かのグループごとに順番にだった気がする。

その時、事件(?)は起きた!
なんと、前日電車で見た、パンダのような痣がある人がいたのだ!
格好からして先輩なのは明らか。
『やはり体罰はあるんだ・・・。』
またさらにモチベーションが下がった。
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 [回想1]

真っ白な作業着と作業帽姿となった新入生は、
大きな集会所のような部屋に集められ、書類書きが行われた。
その際の説明は、あの体育館でいきなりブチ切れしてた教官。

口調は強く、終始命令形で、説明を聞くのもドキドキであった。
そんな中、いきなり
「寝てんじゃね~!」
怒鳴り声とともに、
ガンッ!と机を蹴飛ばす音が響いた。

こんな緊張感の中、寝てしまった人がいたことにもびっくりしたが、
いきなり机を蹴飛ばすって、『ここは軍隊か?』と思った。

説明は200名近くの新入生をいっぺんに同じ部屋で行う形だったので、
とても分かりづらく、分からなくても怖くて質問できるような状況ではなかった。
それでも、教官はどんどんと先に進み、
最終的には、わからない箇所(親の勤務先住所とか)は明日まで(?)に電話で聞いておくよう指示した。

なんとも無謀な話である。
あの説明では理解できるわけがない。
しかも、携帯の使用は禁止で、公衆電話の場所もわからない。
いつかけていいのかもわからない。

段々と真っ白な作業服が囚人服に見えてきた・・・。

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 [回想1]

寮は、男子寮と女子寮は分かれていて、
女子寮はできて間もないと言うだけあって、本当に綺麗な建物だった。

じゅうたんが建物内に敷き詰められていて、
入り口でスリッパに履き替え、階段を上った2階が学生寮となっていた。
1階には当直の教官の部屋があったが、他には何があったかイマイチ覚えていない。

新入生の女子は15人程度しかいなかった。
新入生は6人くらいずつ2~3部屋に分かれた。

部屋には、10月入校過程の先輩が1人、
ベージュっぽい作業服を着て在室していて、
もう1人、2年過程の先輩がいると教えてくれた。
新入生4人と先輩2人の6人部屋というわけである。

6人で2部屋が割り当てられていて、
1部屋は勉強部屋で机と本棚、ロッカーがあり、
もう1部屋はベッドがある部屋だった。
印象としては、綺麗だけど、何もない、ちょっと無機質な印象だった。

『ここで2年、大丈夫だろうか?』という思いと、
『さっきのは‘脅し’だから・・・。』という思いが、
心の中で交錯し微妙な気分ではあったが、同期の子とは笑顔で話した。


そして、貸与された真っ白の作業着と持参した真っ白の運動靴に着替えて、
ドキドキ&ビクビクのプレ保安学校生活の初日はまだまだ続く・・・。

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 [回想1]

ビビリまくって頭がボーっと真っ白な状態で体育館を出た時、
たまたま通路を走ってきた1人の先輩が、
入り口にいた制服姿の教官の3mくらい手前でピタっ!と止まり、
走ってきた勢いでやや斜めりながらも、「お疲れ様です!」と敬礼しながら挨拶し、
教官からの返礼があると再び走って去っていった。

たったこれだけのことだが、
あの斜めり具合と、
キリっとした目で教官に敬礼していた先輩の姿は、
なぜか今でも印象に残っている。
絶対的な上下関係をこのひとコマに感じたのかもしれない。


前後どちらが先に行われたか覚えてないが、
この日は体育館でお昼ご飯(牛丼)を食べ、被服の一部貸与も行われた。

被服は、女性教官に新入りが引き連れられて、
小さな建物で1つ1つサイズを確認した。
女性教官もやっぱりちょっと怖かった記憶がある。

みんな、制帽や制服、作業服など、この時ばかりは目がキラキラしていたが、
すでに意気消沈していた私は、
男子の警察官や自衛官のような制帽に憧れていたせいもあり、
女子の制帽を見て、『変なの。かっこ悪い・・・。』と思ってしまった。

そのときはサイズを合わせだけで、
実際にこの日に貸与されたのは真っ白な作業服と作業帽だけだった。
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 [回想1]

「ここではわからんヤツは殴る。」
「でも‘体罰’とは言わない。‘愛のムチ’と言うんだ!」 

『うわっ!言い切ったよ・・・。』
『教育機関での体罰って禁止じゃなかったっけ?』
『あっ!ここは文部省管轄じゃないや!』

「殴るとたまに『親にも殴られたことがない』と言うヤツがいるが、
 殴らなかった親が悪い!
「わからんヤツは殴って覚えさせる。」

この時、一瞬、昨日電車で見た目の周りに痣のあった人を思い出した。
『これは脅しじゃなく、本気だ・・・。』
その人がここの学生とは限らないのに、なぜがそう思った。

「あと、ここでは男女の区別はするが、差別はしない」
「体力がない、そんなの知らない」

これも確かに一理あるが、体力がないのは生理的な違い。
ある程度は考慮しないと・・・。
基準が全て一緒はおかしいだろ!

ここにいたら殴られるかも・・・という恐怖がさらに加わり、
いっぱいいっぱいになってしまって、その後のことはよく覚えてない。
でも確か、保護者は学校内を見学後に帰宅することになり、
新入生もどこかに移動となったと思う。

もう当分母にも会えないのだなと思い、
ふと移動し始めた保護者席を見ると、偶然にも母と目が合ったのを覚えている。

母曰く、
『普段ああいう場面では目を反らす私が、
私(母)を見たので、こいつ(私)はきっと帰ってくるだろうな』
と思ったという。

さすが親にはかなわない。本当にそうなってしまったのだから・・・。

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 [回想1]

「お前ら全員その場に立て!」

たしかその年は、不審船事件の発生で、
海上自衛隊に初めて‘海上警備行動’が下された年の翌年だった。

そのせいだろう、ピリピリした空気がしょっぱなから漂っていた。
と、いうよりは、今思えば馬鹿みたいに‘漂わせていた’ように思う。

新入りに対する第一声が罵声と化したのもこの影響だろう。
では、次はどんな雷が落ちるのか?

いきなり怒鳴られ、立たされている着校したばかりの我々を
不安げな様子で隣の列の保護者たちが見守る中、
担当官は新入りをギロっとした目で一周見渡すと、

「そこのお前!お前のその頭は何だ!?」

新入りの誰かを指差した。
あまりにビビッたのか、その人は声さえ出ない・・・。
誰もが『誰だ?』という思いと、
『良かった、自分じゃない』という思いに駆られた。

「入学案内に‘髪を黒くしてこい’と書いてあっただろう!」
「読んでないんか?! あ゛?」

京都のなまりなのか、標準語ではなかったようだが、
それでも迫力はすごかった。

いきなりのすごい剣幕にその男子がうろたえていると、
「お前もだ!」
と、今度は私の隣の子を指した。

『うわ!隣の子だ!女の子だよ、大丈夫かな?』
という心配をよそに、その子は即答した。
「地毛です!」

『すげ~、即答だよ。勇気あるなぁ。』
なんて、思っていたのも束の間、
「あ゛?」
担当官には声が聞こえなかったらしい。
その子は再び「地毛です!」と答えた。

担当官はそれを聞くと、
「地毛ぇ?それならお前の頭からは絶対に黒い髪は生えてこないんだな!?」
『まだ突っかかるか?このおっさん』
「はい・・・」
「ならいい。それなら悪かったな」
『あっ、謝った。』

「あとお前も!」
別の誰かも指された。

その後の言葉はあまり正確には覚えていないが、
取材が入る入校式までには、
茶髪を戻してなかった人も地毛で栗毛な人もカラスのような
‘スーパーブラック’に染めてもらうとを言ってた。

なんともむちゃくちゃな話である。
茶髪の人は言われても仕方ないが、地毛の人まで染めろって・・・。

しかし、この後、さらに‘脅し’は続いた。
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 [回想1]

「お前ら全員今すぐ帰れ!」

今でも強烈なインパクトとして残っているのが、
海上保安学校に着校して初めて放たれたこの第一声である。

海上保安学校は、入校式の1週間前に着校(簡単に言うと‘入寮’)する。
その時点ではまだ正式に採用されたことになっていない。
入校式が済んで初めて保安学校生となり、採用されたことになる。

その記念すべき着校日。
母と一緒にスーツ姿で着校した。

入り口で制服姿の海上保安官が「おはよう」と挨拶していた。
ほとんどの着校者は会釈を返して、案内されるがままに中へ入って行った。
私も同じように会釈をし、案内された体育館の中へと進んだ。
体育館の中は、入って左側に保護者の席、真ん中が着校者の席、右側が学校関係者の席だった。

着校したてて右も左も分からぬまま、
案内された通り、前から席を詰めて座り、
静かに次の指示を待っていた。
10~15分経った頃だろうか、
担当官が後方からズカズカと入ってきた。

何が始まるのか?
不安と期待でその担当官に目をやった途端、
その一言は発せられた。

ピーンと体育館内に緊張が走り、保護者席までが静まりかえった。
担当官は再び言った。

「お前ら今すぐ帰れ!」

『とんでもないとこに来てしまった・・・。』
と思うと同時に、
『何を言ってるんだ?このおっさん?』
とビビりながらも思った。

担当官は続けた。
「入り口で挨拶をしても誰も返すヤツがおらんかった。
 挨拶もできないうようなヤツらはいらない。今すぐ帰れ!」

なるほど、一理ある。
しかし、そういうの(怒鳴り散らすとか・・・)は、入校後にすべきでは?
いや、百歩譲って、保護者の前でやるのはいかがなものかと・・・。

そんなことを思うか思わないかのうちに、次の爆発があった。


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 [回想1]

私は本来、自衛隊のパイロット希望であった。
なので、進学校であるにも関わらず、大学は1校も受験せず、
『学校の異端児』と言われながらも受験したのが、
航空自衛隊の航空学生、曹候補学生、曹候補士、2士、そして、海上保安学校である。

しかし、航空学生は今より基準の厳しかった航空身体検査と面接の2次試験で、
曹候補学生は1次で、曹候補士は2次で落ちてしまい、
受かったのは航空自衛隊の2士と海上保安学校だけだった。

こうやって書くと、中には、
『自衛隊も落ちるほどのおバカさん』と思われる方もいるかもしれないが、
当時、一番倍率の低い陸上自衛隊の2士でも2~3倍はあったし、
海上・航空はさらに倍率が上がり、
男子より採用の少ない女子では10倍以上もの倍率があった。
‘軍人さん’になるのもおつむが必要な時代なのである。

高校生だった私は、当時、こんな比較をしてしまった。
自衛隊の2士は任期制。なので、平たく言うと契約社員。
採用試験のレベルも中卒程度の国語・数学・社会・作文と低い。
それに引き換え、海上保安学校は、学生とはいえ正社員。
採用試験のレベルは高卒程度の一般教養・数学・英語とハイレベル。
万が一、来年航空学生に再チャレンジするなら、学生の方が勉強もできるだろう。

そして出した結果が、海上保安学校への入校だったのである。

そう、これから行く‘そこ’とは、
海上保安官の中堅職員を養成する機関、‘海上保安学校’。

中身ではなく、表面上で決めてしまった進路を、
高校卒業したばかりの私が悔やむことになるのは、このわずか2日後のこととなる・・・。
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 [回想1]

『何だここは・・・? 刑務所?』
『何でここにいるんだろう?』
『何か悪いことしたっけか?』

そんな言葉がぐるぐると頭を回りっぱなしなくらい、
‘そこ’での3日間はインパクトのあるものだった。

京都から乗り継いで特急で2時間、
正直、僻地へ飛ばされる気分だった。

でも、列車が着いた街は、
日本海を臨んだ、どこにでもある港町だった。

‘そこ’へは翌日行く予定だったので、
その日は‘そこ’からの案内にあったホテルに1泊した。
お世辞にも綺麗とはいえない小さなビジネスホテルだった。

ホテルでの母との会話はあまり覚えていない。
ただ、初めて親元を離れることもあり、
少し強がった口調や態度を取ってしまったように思う。

さっきの列車では、ボクシングでもやっているのか、
目の周りにパンダのようなアザのある同年代くらいの人がいた。

友人同士なのだろう、2~3人と談笑してはいたが、
どう見ても、彼らもこれから行く‘そこ’に行く人たちに見えた。

今思えば、この時から一抹の不安が生じていたように思う。
そんな不安をかき消したくて、
ホテルではMDで大好きなミスチルの‘終わりなき旅’を聞きながら大声で歌った。

‘そこ’は、どんな所なのだろうか?
そもそも、私は自衛隊への入隊を希望していたのに、
なぜ、‘そこ’に行くことにしたのだろう?
それはもう、高校生の一瞬の気の迷いとしか言い様がなかった。



過去の出来事を思い出しながらの記載なので、
多少間違っていることや記憶違いがあるかもしれません。

あと、当方は物書きではないので、文章構成等あんまり考えてません。
思い出すまま、思いつくままの言葉で文章にしてます。
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